事業承継の問題とは?まず押さえたい全体像
事業承継の問題とは、後継者不在・資金・税負担・準備不足が重なり、承継が滞る状態を指します。
事業承継は「誰に、何を、いつまでに渡すか」という複数の課題が同時に絡み合う取り組みです。一つの解決策で片付くものではなく、経営者ごとに事情が異なるため、まず全体像を掴むことが最初の一歩になります。
「事業承継」と「事業継承」の違いを整理する
日常では「事業継承」という表記も見かけますが、公的な制度やガイドラインでは「事業承継」が用いられます。経営権、事業用資産、ノウハウなどの有形・無形の経営資源を先代から引き継ぐ場面では「承継」と呼ばれることが多いです。他方で、伝統や技術などを次世代に受け継いでいく場面では「継承」が使われるのが一般的です。言葉の揺れに惑わされず、公式情報で使われる表現を基準に情報を集めると混乱を避けられます。
中小企業庁データで見る問題の広がり
中小企業庁の「事業承継ガイドライン」では、承継支援を5つのステップで整理しています。ここで重要なのは、最初のステップである「気づき」こそが最大の関門だという点です。「まだ早い」「考えている」と言いながら何年も着手しない経営者が大半を占めます。年齢・健康・業績推移といった具体的な数字で当事者意識を持つことが、問題解決の起点になります。
問題は「リスク」だけでなく「先送りされた意思決定」でもある
事業承継の問題の本質は、外部環境のリスクだけではありません。むしろ「いつか決めよう」と先送りしてきた意思決定の蓄積が、いざというときに選択肢を奪います。問題を「先送りされた判断」と捉え直すと、今できることが見えてきます。
後継者不足と2025年問題──数字で見る深刻度
後継者不足と経営者の高齢化が同時進行し、黒字でも廃業に至る企業が全国で増えています。
少子高齢化が後継者不足を招く構造
少子高齢化により、親族内で後継者を確保しにくい時代になりました。かつては「子が継ぐ」ことが自然でしたが、今は子が別の道を選ぶケースも珍しくありません。後継者を「誰から選ぶか」を、前提を置かずに検討する必要があります。
2025年問題の定量インパクト

いわゆる「2025年問題」は、経営者の高齢化のピークが一斉に訪れることを指します。中小企業の経営者の多くが引退年齢を迎えることで深刻な後継者不足と廃業の急増に直面する現象です。
中小企業庁のデータによると、現在も経営者年齢の水準は非常に高く、2025年には実に60歳以上の経営者が過半数を占めるにまで至っています。このような具体的な数字を自身の会社の状況(現在の年齢や後継者の有無)に重ねてみることが、まさに当事者意識を持つための第一歩となります。
黒字廃業はなぜ起きるのか
利益が出ているのに廃業に至る「黒字廃業」は、承継の準備不足から生じます。後継者育成、株式の集約、関係者への開示——これらに要する時間を見込まずにいると、いざというとき手を打てません。黒字であること自体が、承継を後回しにする理由になってしまうのです。
問題を「M&Aありき」で考えない中立的な選択肢の並べ方
承継の選択肢は親族内・従業員・第三者(M&A)まで幅広く、優劣ではなく自社への適合で選ぶべきです。
後継者を「誰」から選ぶかで、承継パターンは大きく3つに分かれます。この比較は承継検討の初期に欠かせない作業です。「M&Aが流行っているから」といった理由で入り口を狭めず、まず選択肢を並べることが大切です。
親族内承継の現実と向き合い方
親族内承継は依然として中心的な選択肢ですが、後継者候補の意思や適性を丁寧に確認する必要があります。「継いでくれるはず」という思い込みではなく、本人と率直に話し合う場を持つことが出発点です。
従業員承継(役員・幹部への承継)という選択肢
長年会社を支えてきた役員や幹部への承継も有力な選択肢です。事業への理解が深い一方で、株式を買い取る資金の確保という課題が伴います。適性と資金の両面から現実的に検討します。
第三者承継(M&A)を検討する前に確認したいこと
第三者への承継を検討する前に、まず自社が「渡せる状態」にあるかを確認しましょう。株式以外にも、経営者個人名義の事業用不動産や契約上の地位、許認可など、承継が必要な経営資源は多岐にわたります。これらの把握なくして、円滑な第三者承継はありません。
「どれを選ぶか」を整理する意思決定の視点
選択肢に優劣はなく、あるのは「自社への適合」です。後継者候補の有無、資金、事業の将来性を並べ、消去法ではなく積極的な判断で選ぶ。この整理そのものが、承継の第一歩になります。
デジタルで承継をスムーズにする──見える化という準備
業務やお金の流れをデジタルで見える化すると、後継者への引き継ぎと会社の価値説明が格段に楽になります。
属人化・ワンマン経営という引き継ぎの壁
経営権とは、法的な代表権と実態としての経営支配の両方を指します。承継では、この両者を一致させる作業が必要です。ところが、経営が経営者一人に集中していると、実態としての支配を渡すのが難しくなります。属人化は、承継の見えにくい壁です。
クラウド会計・業務可視化で「渡せる会社」にする
クラウド会計や業務の可視化ツールを使えば、お金と業務の流れが誰の目にも見える形になります。「社長の頭の中にしかない」状態から、「記録として渡せる」状態へ。これが承継の準備を大きく前に進めます。
デジタル承継が後継者の判断を後押しする理由
見える化された情報は、後継者が経営判断を下す土台になります。何が収益を生み出す源泉となっており、何が今後取り組むべき課題なのかがデータで示されていれば、後継者は自信を持って舵取りできます。デジタル活用と事業承継の関係については、次世代が力を発揮できる会社の渡し方の記事もあわせてご覧ください。
承継を「守り」でなく「成長機会」に変える視点
承継のタイミングは、事業を見直し次世代の成長戦略を描き直す絶好の機会でもあります。
承継後を見据えた事業の棚卸し
承継は、これまでの事業を棚卸しする良い機会です。何を承継し、何を見直すか。株式だけでなく、事業用資産や契約、許認可まで含めて整理することで、会社の輪郭がはっきりします。
新体制で伸ばせる領域を見つける
後継者の視点が入ると、これまで気づかなかった成長領域が見えてくることがあります。承継は終わりではなく、新体制での再スタートです。守りだけでなく、伸ばす方向にも目を向けたいところです。
前向きな承継が従業員と取引先の安心につながる
承継が前向きに進んでいると分かれば、従業員も取引先も安心します。「この会社は続く」というメッセージは、地域に根ざした事業ほど大きな意味を持ちます。承継は関係者全体への責任でもあるのです。
制度・税務・専門家の力を借りるときの考え方
事業承継には税制や公的支援など専門領域が多く、早めに適切な専門家と連携することが安全です。
事業承継に関わる公的な支援制度の全体像
公的な支援としては、中小企業庁や事業承継・引継ぎ支援センター、中小企業基盤整備機構、日本政策金融公庫、商工会・商工会議所などがあります。まずはこうした公的機関の情報にあたり、自社が使える支援を把握することが第一歩です。制度の詳細や最新の内容は、各機関の公式情報でご確認ください。
税務は税理士と連携して進める
事業承継では株式や資産の移転に伴う税務が絡みます。税額の計算や申告は税理士の領域ですので、専門家と連携して進めるのが安全です。税制の活用には準備期間が必要になることも多く、早めの相談が選択肢を広げます。
補助金・制度は「使えるか」を早めに確認する
補助金や制度は、使えるかどうかを早めに確認することが肝心です。採択が保証されるものではありませんが、要件を満たすかを事前に把握しておくことで、計画に組み込みやすくなります。締切や公募時期にも注意しましょう。
よくある質問(事業承継の問題)
事業承継の問題は、準備開始が早いほど選択肢が広がり、解決の余地も大きくなります。
事業承継の準備はいつから始めるべき?
「5年後に引退」といった日付先行の逆算は避けたい進め方です。後継者育成、株式集約、税制活用の準備には、それぞれ相応の時間がかかります。必要な所要時間から逆算すると、多くの場合「今すぐ」が答えになります。
後継者がいない場合、どんな解決策がある?
親族内に候補がいなくても、従業員承継や第三者承継(M&A)という選択肢があります。まずは公的な支援機関に相談し、自社に合う道を並べて検討しましょう。選択肢は一つではありません。
親子間の承継でトラブルを避けるには?
「継いでくれるはず」という思い込みを避け、本人の意思を早めに確認することが大切です。また、緊急時に備えて遺言や後継候補の指名といった最低限の対策を平時から準備しておくと、家族関係のトラブルを軽減できます。
小規模事業者でも相談していい?
もちろんです。規模の大小に関わらず、承継は経営の重要課題です。公的な支援機関は小規模事業者の相談も受け付けています。「うちはまだ早い」と思わず、まず現状を整理することから始めてみてください。
多摩地域で事業承継を考える経営者の方へ
地域に根ざした事業ほど、承継は取引先・従業員・地域とのつながりを守る大切な取り組みです。
多摩地域には、長年地域とともに歩んできた企業が数多くあります。そうした会社の承継は、単なる事業の引き継ぎにとどまらず、地域の雇用やつながりを次世代へ受け渡す営みでもあります。
きらくにコンサルティングでは、多摩地域を拠点に、事業承継・補助金・デジタル活用の支援を行っています。中小企業診断士・行政書士・ウェブ解析士・事業承継士として、経営・法務・デジタルの視点を横断しながら、経営者の「次の一手」を一緒に考えることを大切にしています。
現場で感じる「早めの一歩」の大切さ
現場で最も痛感するのは、「気づき」の遅れが選択肢を奪うということです。経営者の急な健康悪化などで計画的な準備ができないと、スケジュールが最優先の制約となり、リスクの高い選択を迫られます。だからこそ、平時からの一歩が効いてきます。
まずは自社の状況整理から始めませんか
承継は、頼む・頼まないに関わらず、まず自社の状況を整理することから始まります。後継者の有無、渡すべき資産、必要な時間——これらを書き出すだけでも、次の一手が見えてきます。
> 事業承継の全体像をさらに知りたい方は、次世代が力を発揮できる会社の渡し方もあわせてご覧ください。承継の進め方について具体的に相談したい方は、事業承継サポートからお気軽にどうぞ。

